ソフトウェア開発の流れとは? 種類・工程・開発モデルと注意点まで実務視点で解説

ソフトウェア開発のプロセスは複雑に見えますが、基本となる流れやモデル、そして各工程での注意点を押さえることで、プロジェクトは格段に進めやすくなります。​本記事では、組み込み系・業務系・Web系の開発の違いから、具体的な開発工程、代表的な開発モデルまでを網羅的に解説します。

ソフトウェア開発の流れ

ソフトウェア開発の3つの種類

ソフトウェア開発は、対象や目的に応じて大きく3つの種類に分けられ、それぞれに特有の開発環境や要件があります。

  • 組み込み系ソフトウェア開発
  • 業務系ソフトウェア開発(基幹システム)
  • Web系システム開発

図解:ソフトウェア開発の種類と特徴

※他にも、スマートフォンやPCで使用するアプリケーション開発や、エンターテイメントを主目的としたゲーム開発、近年注目されるAI(人工知能)関連のシステム開発などがあります。業務システムをモバイルアプリと連携したり、WebサービスにAI機能を搭載するといった、複数種類のソフトウェアを組み合わせた開発プロジェクトも珍しくありません。

組み込み系ソフトウェア開発

組み込み系ソフトウェアは、家電製品や自動車、医療機器などのハードウェアに直接組み込まれ、特定の機能を制御・実行します。​リアルタイム性や高い信頼性が求められるため、厳密な設計とテストが必要です。​

この分野では、ハードウェアとの密接な連携が不可欠であり、開発環境やツールチェーンが特定のプラットフォームに依存することが多いです。​そのため、開発初期段階での環境設定やツールの選定がプロジェクト全体の効率に大きく影響します。​

業務系ソフトウェア開発(基幹システム)

業務系ソフトウェアは、企業や官公庁の財務会計、人事管理、在庫管理などの業務を支援するシステムです。​大規模かつ複雑なシステムが多く、長期的な運用と保守が前提となります。​

基幹システムは、業務プロセスの変更や法改正に伴うシステム改修が頻繁に発生します。​そのため、柔軟な設計と変更管理の徹底が求められます。​データの正確性とシステムの安定性を維持するためには、定期的な監査やレビューも重要です。​

Web系システム開発

Web系システムは、インターネットを通じてサービスを提供するシステムで、オンラインショッピングサイトやSNS、Webメールなどが該当します。​ブラウザを介して利用され、プラットフォームに依存しない点がメリットと言えます。​

Web系システムは多数のユーザーが同時にアクセスする可能性があるため、負荷分散やスケーラビリティを考慮する必要があります。​またインターネットに公開されるため、不正アクセスやデータ漏洩を防ぐためのセキュリティ対策が重要です。ユーザーの信頼を維持するため、​定期的なセキュリティチェックと脆弱性への対応が欠かせません。

ソフトウェア開発の流れ

​ソフトウェア開発は、要件定義から運用保守までの複数のフェーズで構成され、それぞれの段階に重要な目的と役割があります。​ここでは、要件定義から運用保守までの各フェーズの目的と成果物、関与するメンバーの役割について解説します。​

①要件定義

プロジェクトの出発点であり、「何を作るのか」を明確にする大切なフェーズです。顧客やユーザーがソフトウェアにどのような価値や機能を期待しているのか(ユーザー要件)を丁寧にヒアリングし、それを実現するためにシステムが備えるべき機能や性能(機能要件・非機能要件)を具体的に定義していきます。

この段階で、プロジェクトの目的、達成すべきゴール、そしてどこまでを開発範囲とするか(スコープ)を決定し、関係者間で合意を形成しておくことが望ましいでしょう。ここで定義された内容が、この後の全ての工程の基礎となり、予算や人員、スケジュールの概算もこのタイミングで固められるのが一般的です。

主な関与者としてはプロジェクトマネージャー(PM)やシステムエンジニア(SE)です。彼らが顧客のニーズを汲み取り、要求仕様として文書にまとめていきます。

②設計

要件定義で明確になった仕様をもとに、実現方法を具体的に設計するフェーズです。多くの場合、「基本設計」と「詳細設計」という二つのステップに分けて進められます。

基本設計(外部設計): 主にユーザーの視点から見たシステムの振る舞いや使い勝手を中心に、全体像を描いていきます。画面のデザインや操作の流れ(UI/UXデザイン)、システム全体の構成(アーキテクチャ設計)、主要な機能がどのように処理されるかなどを決定し、「基本設計書」として文書化します。

詳細設計(内部設計): 開発者(プログラマー)が実際のコーディング作業に取り掛かれるように、システムの内部構造を細かく設計します。プログラムをどのような部品(モジュール)に分けるか、各部品が具体的にどのような処理を行うか、データベースをどのような構造にするか(データベース設計)、部品同士がどのように情報をやり取りするか(API設計)などを明確に定義し、「詳細設計書」に落とし込みます。この工程はSEが中心となって進めることが多いですが、必要に応じてプログラマー(PG)も設計の議論に参加することがあります。

③実装

設計書をもとに、プログラマーがプログラミング言語(Java, Python, Rubyなど)を使って実際にコードを記述(コーディング)し、ソフトウェアを形にしていく工程です。開発の効率や品質を高めるために、フレームワークやライブラリといった既存の技術やツールを活用することもよくあります。

この段階では、設計された仕様を正確にコードに反映させるだけでなく、コード自体の品質(読みやすさ、修正のしやすさ、効率の良さなど)を保つための工夫、例えばチームで決めたコーディングルールを守ることや、後で触れるコードレビュー、リファクタリングといった活動が大切になってきます。

規模の大きな開発プロジェクトでは、機能ごとにチームを分けて、並行して開発作業を進めることもあります。主にPGが実装を担当し、SEは技術的なサポートや進捗の確認などを行います。

④テスト

テストは、ソフトウェアの品質を保証し、信頼性を確保するために欠かせない工程です。実装されたソフトウェアが、設計通りに正しく動作するか、そして求められている品質基準を満たしているかを様々な角度から検証するフェーズです。ソフトウェアに潜むバグや不具合を見つけ出し、修正することで、品質を確かなものにしていきます。テストは段階的に行われるのが一般的で、主に以下のような種類があります。

A.単体テスト: 作成したプログラムの小さな単位(関数やメソッド、モジュール)が、それぞれ意図した通りに動くかを確認します。実装の初期段階で行うのが一般的です。

B.結合テスト: 複数のモジュールを組み合わせて、それらが連携して正しく動作するか(データの受け渡しなど)を検証します。

C.システムテスト: 開発したシステム全体として、要件定義で定められた機能や性能などを満たしているかを総合的に確認します。

D.受入テスト: 最終的にシステムを利用する顧客やユーザー自身が、実際の業務に近い形でシステムを操作し、要求を満たしているか、導入して問題ないかを評価・確認します。


大規模なプロジェクトでは、テストする項目が数万件にも及ぶことがあり、専門の品質保証(QA)チームがテスト計画の立案から実行、結果の分析までを担当することもあります。SEやQA担当者がこの工程での品質管理をサポートします。

⑤運用保守

開発とテストを終えたソフトウェアを、実際にユーザーが利用する環境に展開(リリース・移行)し、利用が開始された後のフェーズを指します。

特に金融機関や官公庁の大規模なシステム入れ替えなどでは、大量のデータを安全に移行したり、既存システムからスムーズに切り替えたりするための、丁寧な計画とリスクへの備えが重要になります。システム稼働開始後も、安定して動作しているか監視し、もし障害が発生した場合の迅速な原因調査と対応(バグ修正)、OSや関連ソフトウェアのアップデート対応、ユーザーからの問い合わせへの対応、さらにはビジネス環境の変化や新たな要望に応えるための機能改善や追加など、ソフトウェアの価値を長く維持し、向上させていくための活動が継続的に行われます。

DX推進を目指すプロジェクトなどでは、リリース後も継続的に機能改善や価値提供を行っていく(継続的デリバリー)ことが、最初から計画に織り込まれていることも珍しくありません。運用担当者や保守を専門とするSE、場合によっては開発に関わったメンバーも、このフェーズで役割を担うことがあります。

開発モデルの種類と体制の違い

プロジェクトの成功には、目的やチーム体制に応じた開発モデルの選択が欠かせません。ここでは、代表的な3つのモデルを紹介します。

ウォーターフォールモデル

ウォーターフォールモデルは、開発工程を順序立てて進める手法です。要件定義、設計、実装、テスト、運用といった各フェーズを一方向に進め、前の工程が完了してから次の工程に移行します。ウォーターフォールは計画性と進捗管理のしやすさが特徴で、大規模プロジェクトや明確な要件が定まっている場合に適しています。

アジャイル開発

アジャイル開発は、短い開発サイクル(イテレーション)を繰り返しながら、機能ごとに設計、開発、テストを行う手法です。これにより、変更への柔軟な対応や早期のフィードバックが可能となります。チームは自己組織化され、プロダクトオーナー、スクラムマスター、開発者などが密接に連携しながら進めます。

DevOps

DevOpsは、開発(Development)と運用(Operations)を統合し、協力体制を強化するアプローチです。これにより、ソフトウェアのリリース頻度を高め、品質向上を図ります。開発者と運用担当者が一体となり、継続的インテグレーション(CI)や継続的デリバリー(CD)を実現するためのツールやプロセスを活用します。

ソフトウェア開発のフェーズごとの注意点と品質確保のポイント

ソフトウェア開発は複数のフェーズに分かれており、各段階での適切な対応が全体の品質を左右します。以下では、主要なフェーズごとに注意すべきポイントと品質確保のための対策を解説します。

①要件定義時に曖昧な部分をなくす

要件定義は、プロジェクト全体の進むべき道を示す、いわば設計図の元となるものです。この段階で内容が曖昧だったり、関係者の間で認識にずれがあったりすると、後の工程で大きな手戻りや仕様変更が発生し、場合によってはプロジェクトの成功そのものを難しくしてしまうケースもあります。

クライアントやユーザーからの要望を「良い感じに」「よしなに」といった抽象的な言葉のままにせず、5W2H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように、いくらで)などを意識しながら具体的に掘り下げ、機能、性能、制約条件などを客観的で分かりやすい言葉で文書に落とし込むことが大切です。そして、作成した要件定義書をもとに、開発チーム、顧客、関連部署など、関わるすべての人々で内容を確認し合い、全員が同じ理解に至る(合意形成)ための場を設けることが望ましいでしょう。「要求されていることはこれで合っているか」「技術的に実現できるか」など、様々な角度から丁寧に確認を進めましょう。 

②設計時にスケーラビリティを考慮する

設計フェーズでは、単に現時点で求められている機能を実現するだけでなく、将来起こりうる変化にもある程度対応できるような設計を心掛けることが重要です。

特に意識すべきは、スケーラビリティ(将来、利用者が増えたり、扱うデータ量が増えたりしても対応できる拡張性)と保守性(リリース後に機能を追加したり、仕様を変更したり、バグを修正したりする作業のしやすさ)です。具体策としては、システムを機能ごとに独立した部品(モジュール)として設計する、広く使われている標準的な技術やAPIを活用する、などの工夫が挙げられます。

また、設計段階でしっかりとレビューを行い、技術的な実現性や潜在的な問題点、性能面での懸念などを早い段階で洗い出しておきましょう。これらへの対策は、最終的なソフトウェアの品質に直結します。

③実装時にコードの品質を保つ(レビュー・リファクタリング)

実装フェーズでは、設計書というガイドラインに従ってプログラムコードが書かれていきますが、「とりあえず動けば良い」という考え方では、後々問題が生じる可能性があります。コードの品質は、ソフトウェアが安定して動作するか、期待通りの性能を発揮するか、そして将来のメンテナンスがしやすいかどうかに直接関わってきます。他の人が読んでも理解しやすく、修正しやすい、いわゆる「読みやすい(可読性の高い)コード」を書くことを常に意識すると良いでしょう。

まずは、チーム内でコーディング規約を定め、それに沿ってコードを書くことが基本となります。

その際、コードレビュー(書いたコードを他の開発者に見てもらい、意見をもらうこと)を開発プロセスに取り入れることで、自分で発見できなかったバグや改善点が見つかるなど、客観的な視点からの品質向上が期待できます。開発を進める中で複雑になってしまったり、読みにくくなってしまったりしたコードを、リファクタリング(ソフトウェアの外部から見た動きは変えずに、内部の構造をより良く整理・改善すること)も、コードの品質を確保する重要な工程です。

④テストの自動化を活用する

テストフェーズは、開発したソフトウェアが要求通りに機能し、安心してユーザーに提供できる品質であることを確認するための大切な工程です。しかし、すべてのテストを手作業で行うとなると多くの時間と労力がかかりますし、繰り返し作業の中ではどうしても人的なミスが発生する可能性も出てきます。そこで有効なのが、テスト作業の一部を自動化することです。特にプログラムの小さな単位で行う単体テストや、修正によって他の部分に予期せぬ影響が出ていないかを確認する回帰テスト(リグレッションテスト)など、頻繁に繰り返す必要があるテストは、自動化の効果を実感しやすい領域と言えるでしょう。

テスト用のコード(テストスクリプト)を作成し、ツールを使って自動で実行する仕組みを導入すれば、テストにかかる時間を短縮できますし、テストの範囲を広げたり、人的ミスを減らすといったメリットも期待できます。ただし、どんなテストでも自動化できるわけではありませんし、自動化ツールの導入やテストコードの作成・維持にはコストもかかります。費用対効果を考えながら、プロジェクトの特性や目標に合わせて、計画的に導入を検討しましょう。

まとめ

ソフトウェア開発の理論だけでなく、実務で活かせる知識として、開発の種類、工程、モデル、そして注意点を解説しました。

現代の開発現場は変化が激しく、計画通りに進まないことも珍しくありません。そのため、基本知識を状況に応じて使い分ける応用力が、これまで以上に重要になります。本記事で紹介した考え方や注意点が、皆さんのプロジェクトにおける課題解決の糸口となり、より良いソフトウェアを生み出すための一助となれば幸いです。

STELAQのソフトウェア開発支援サービスでプロジェクトを成功に導きます

STELAQでは、自動車、金融、医療、IoTなど多様な産業での豊富な開発実績を基盤に、貴社のソフトウェア開発プロジェクトを成功へと導きます。顧客折衝を含む上流工程から、開発チームと第三者検証チームによる一気通貫の支援、さらにはトレーニングチームによる個社特化型のエンジニア教育まで、プロジェクト全体の課題解決をサポートします。

  • 多様な産業・ドメインでの豊富な開発実績
  • 上流工程から開発・検証・教育まで一気通貫の支援体制
  • 個社に合わせた柔軟なサポートと早期戦力化

ソフトウェア開発プロジェクトの推進、品質向上、人材育成に課題をお持ちでしたら、ぜひ一度STELAQにご相談ください。貴社の状況に合わせた最適な支援プランをご提案し、プロジェクト成功を全力でサポートいたします。

関連する他のコラム

ソフトウェア品質に関するあらゆるお悩みを解決します。
サービスに関するご相談など、お気軽にお問い合わせください。