ベンダーマネジメントとは?業務内容や課題、成功のポイントを一挙に解説

近年、プロジェクト管理において外部ベンダーとの協力は不可欠となっています。しかし、提携するベンダーの数が増加し、管理に苦慮している担当者も多いのではないでしょうか。

適切なベンダーマネジメントができれば、プロジェクトの成功率を大幅に向上させることができるでしょう。

この記事では、ベンダーマネジメントの基本概念から実践的な業務内容、よくある課題とその解決策まで、プロジェクト管理に携わる方が知っておくべき情報を体系的に解説します。

ベンダーマネジメントとは?

ベンダーマネジメントとは、企業がシステム開発や運用を外部ベンダー(外注先)に委託する際に、プロジェクト全体の品質・コスト・納期・リスク等を適切に管理・監督するプロセスを指します。

具体的には、ベンダーの選定から契約内容の明確化、成果物の品質チェック、進捗・リスクのモニタリングまでが含まれます。

ベンダーマネジメントが求められる理由

①深刻なIT人材不足

日本企業ではIT人材の慢性的な不足により、自社内ですべての開発要件を賄えず外部委託に頼らざるを得ない状況が広がっています。経済産業省の推計では、IT人材不足数は現状約17万人から2030年には約79万人に拡大すると予測されており、この不足は今後ますます深刻化すると考えられています。

またガートナーの調査でも、「自社に十分な人員がいないため外部委託せざるを得ない」とする企業が64.7%にも上り、人材不足こそが「ソフトウェア開発内製化における最大の阻害要因」と指摘されています。

人材不足の中でプロジェクトを遂行するため、必然的に外部ベンダーを活用する比率が高まり、それを適切に管理するベンダーマネジメントも不可欠となっています。

②プロジェクトの複雑化

人材不足に加え、業務のデジタル化・高度化に伴い、一つのプロジェクトで複数の専門ベンダーが関与するケースが増えています。例えば、大規模なシステム開発ではサブシステムごとに別々のベンダーが担当することも多く、結果としてベンダーの数が多く管理が複雑になる傾向があります。

実際にアウトソーシング先の増加により「ベンダー管理が複雑化し困難になっている」と感じる企業も少なくありません。また複数ベンダーのうち一社の遅延が全体スケジュール遅延を引き起こすなど、連鎖的なリスクも高まっています。

ベンダーマネジメントの業務内容

実際にベンダーマネジメント担当者(あるいはPM)はどのような業務を行うのでしょうか。主な業務内容を解説します。

①ベンダーの選定

プロジェクト開始時にはまず適切なベンダーを選定する業務があります。要求事項を固めた上でRFI/RFPを発行し、複数ベンダーから提案を募ります。

その後、各ベンダーの提案を費用対効果・スケジュール遵守・技術力・実績など複数観点で慎重に評価し、最適なベンダーを決定します。評価にあたっては価格面だけでなく、長期的な信頼関係を築けるかや、ベンダーの課題や限界もチェックしましょう。

②契約交渉・契約管理

ベンダー決定後は契約条件の交渉と正式契約の締結を行います。プロジェクトの範囲、成果物、納期、価格、支払い条件、品質基準、リスク対応、変更管理ルール等を詳細に取り決め、契約書およびプロジェクト計画書に明文化します。

特に、プロジェクト中の仕様変更への対応方法については具体的な条項を含め、想定外の追加コストや手戻りが発生しないよう予め合意しておくことが望まれます。契約書と計画書で合意した内容はベンダーコントロールの拠り所となり、契約に漏れや曖昧さが無いようにすることが重要です。

③進捗管理

プロジェクト開始後はベンダーの作業進捗と成果物の品質をモニタリングする業務が中心となります。定期的に進捗報告会やレビューを開催し、ベンダーからの報告を受けて各フェーズの進捗状況や成果物品質をチェックします。

また問題や課題が報告された際には関係者を集めて原因の特定と対策の立案を行い、必要ならスケジュールやリソース配分の見直しをベンダーと協議します。

④成果物の評価・検収

受け取った成果物が契約仕様や品質基準を満たすか確認し、不備があれば是正を要求します。

動作確認にとどまらず、要求仕様との整合性、保守性、拡張性なども総合的に評価する必要があります。

⑤パフォーマンス評価

プロジェクト完了時にはベンダーのパフォーマンス評価を実施します。
具体的な評価項目として、

・納期遵守度
・成果物品質の達成度
・変更要求への柔軟性
・コミュニケーションの円滑さ

などが挙げられます。

評価結果は次回以降のベンダー選定時の貴重なデータともなるため必ず記録・共有し、必要ならベンダーと評価内容をレビューして改善策を議論しましょう。

ベンダーマネジメントの課題3選

ベンダーマネジメントを実践する際には、さまざまな課題に直面することがあります。主要な課題とその背景を理解しておくことが重要です。

①ベンダー管理の複雑さ

現在はさまざまなシステムがクラウド化し、低コストで導入できることから、取引するベンダーの数が膨大となっています。それにより、取引があるベンダーの契約内容の管理や最適なベンダーを選定できない問題が発生しています。

ベンダーマネジメントは契約・品質・進捗・調整など多岐にわたるため、専任の組織や担当者がいない場合、プロジェクトマネージャー個人に過度な負荷が集中する傾向があります。とりわけ大規模プロジェクトで多数のベンダーを個別管理するのは非常に手間がかかり、「管理のための管理」に陥りかねません。

②作業領域が曖昧

発注側とベンダーの間で「どこからどこまで誰の責任か」が曖昧だと大きな問題につながります。プロジェクトの作業領域に認識齟齬があると、「それはベンダーの仕事と思っていた/自社で対応すべきと思っていた」といった食い違いから手戻りや抜け漏れが発生しがちです。

特に複数ベンダーがいる場合、責任の境界が不明確だとトラブル発生時に責任の所在が曖昧になり、解決まで時間が長引くリスクがあります。

③担当者の負担増加

属人的な対応に頼っていると担当者の負担増大だけでなく、担当者不在時に管理が滞るリスクもはらみます。こうした負荷の偏りに対しては、ベンダーマネジメント専任チーム(VMO)を設置し組織的に対応することで特定個人への負荷集中を防ぐことができます。

しかし中小企業では専任部署を用意できず現場PMが手探りで管理している例も多く、その結果ベンダー対応に追われて本来のマネジメント業務がおろそかになるといった課題が指摘されています。

ベンダーマネジメントを成功させる5つのポイント

ベンダーマネジメントを成功に導くためには、以下の5つのポイントを押さえることが重要です。

①責任範囲を明確にする

ベンダーマネジメント成功の第一歩は、発注側・ベンダー双方の役割と責任を明確に定義することです。プロジェクト計画書やRACI図などを用いて「誰が何を担当し、どこまで責任を負うか」を文書化し共有します。

これによりタスクの曖昧さを排除することで、後になって「聞いていない」「担当外だ」といった対立を防げます。またベンダーが担う具体的な業務範囲を計画書に明記しておけば、意見の相違や誤解も最小限に抑えられるでしょう。

②適切な人材を配置する

ベンダーマネジメントには専門的な知識とスキルが必要です。契約法務、品質管理、リスクマネジメント、コミュニケーション能力など、多様な専門性を持つ人材を適切に配置することが重要です。

組織規模に応じて、専任のベンダーマネジメント組織(VMO)を設置することも検討すべきでしょう。VMOを設置することで、会社全体のノウハウを蓄積し各プロジェクトへ共有が可能となり、効果的な運用を実現できます。

中小企業で専任組織の設置が困難な場合は、外部のコンサルタントやアドバイザーを活用することも有効な選択肢です。

③情報共有を徹底する

ベンダーとの円滑な意思疎通を図る仕組みを整えることが成功の鍵です。

例えばプロジェクト用のポータルやチャットを用意し、進捗報告書や議事録のフォーマットも統一すれば、情報共有のミスが減少します。定期的な会議体(週次・月次の定例ミーティングなど)を設定し、各ベンダーが最新情報を共有できる場を持つのも良いでしょう。

発注側が主導して議事録を作成・配信することで認識合わせを徹底すれば、「言った・言わない」の齟齬を未然に防げます。

④プロジェクト管理のフレームワークを活用する

ベンダーマネジメントを属人化させず組織知として運用するために、標準的なプロセスやフレームワークを導入しましょう。

米国プロジェクトマネジメント協会(PMI)が発行するPMBOKでは、プロジェクト管理を『立ち上げ・計画・実行・監視・終結』の各プロセスと、『範囲・コスト・リスク・調達』などの10の知識エリアで体系化しており、業界や業種を問わず活用できる実践的なフレームワークが提供されています。ベンダーマネジメントの全体像を把握するのに役立つでしょう。

引用:プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOKガイド)第7版+プロジェクトマネジメント

また、IPAが公開している「情報システム・モデル取引・契約書」などのガイドラインを参考に契約書やSLAのひな型を活用すれば、漏れのない契約と責務分担の明確化が図れます。

下記はIPAが提供している、セキュリティ基準に準じたセキュリティ仕様書のイメージです。

引用:『情報処理推進機構』情報システム・モデル取引・契約書(第二版)

⑤現場視点の柔軟な対応を取り入れる

プロジェクト期間中および終了後にベンダーとのレビューを欠かさず実施する習慣も成功要因です。プロジェクト中は週次・月次で進捗や品質のレビューを行い、KPIに基づきベンダーのパフォーマンスをチェックします。

問題があれば早期に是正を依頼し、逆に成果が上がっている場合はベンダーを称賛・鼓舞することでモチベーション維持につなげます。プロジェクト終了時には詳細なベンダー評価を行い、良かった点・改善点をフィードバックします。

加えて、発注側自身もベンダーから意見を募り協力体制への改善策を話し合う機会を持つと良いでしょう。こうした定期的な振り返りとコミュニケーションの場を設けることで、双方の協働関係を継続的に最適化でき、次のプロジェクトではより良い成果が期待できます。

まとめ

ベンダーマネジメントは、現代のプロジェクト管理において不可欠な要素となっています。IT人材不足やプロジェクトの複雑化により、外部ベンダーとの協働は今後さらに重要性を増すでしょう。

適切なベンダーマネジメントで、質の高いプロジェクト成果を実現しましょう。

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