ソフトウェアの品質を支える「ソフトウェアテスト」ですが、多くの開発現場ではIT人材の不足や開発サイクルの短期化といった課題に直面し、十分なテスト体制を維持することが難しくなっています。
そのような時に選択肢として挙がるのが、テスト業務の「外注」です。本記事では、ソフトウェアテストを外部の専門企業に委託する理由と、その具体的なメリット、依頼する際の注意点、そして成功の鍵を握るパートナー企業の選び方までを、網羅的に解説します。

企業がソフトウェアテストを外注する背景
まずは、企業がソフトウェアテストを外部の専門企業に委託する背景にある、以下の3つの理由を掘り下げていきます。
1. 自社のリソース不足をカバーし、品質を担保するため
多くの企業にとって、テスト専門人材の確保は依然として大きな課題です。
十分なリソースがないまま、専門知識を持たない担当者がテストを行うと「テストの抜け漏れ」が発生しやすくなります。
ソフトウェアテストには「同値分割法」や「境界値分析」、「状態遷移テスト」といったさまざまなテスト設計技法があり、テストエンジニアは、最小限の工数で最大限のカバレッジ(網羅率)を確保するテストケースを設計します。
また、特定の担当者の経験や勘に頼ったテストは、その担当者が異動や退職した場合、テストのノウハウが失われ、品質が急激に低下するリスクがあります。テストエンジニアの業務には、テストの観点やプロセスをドキュメント化し、標準化することで、誰が担当しても一定の品質を担保できる体制を構築することも含まれます。
外部の専門チームに依頼することで、必要なリソースを安定的に確保し、属人化のリスクを排した上で品質を担保する体制を構築できます。
2. 早まるリリースサイクルに対応するため
近年のソフトウェア開発では、短いサイクルで開発とリリースを繰り返すアジャイル開発やDevOpsが広く採用されています。これらのアプローチでは、開発の各工程で継続的にテストを組み込むことが品質を維持する上で欠かせません。
とりわけ、CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)のパイプラインにテストプロセスを自動で組み込むには、高度な技術的知見が求められます。そのため、専門知識を持つ外部パートナーの活用が合理的な選択肢に入るのです。
3. テストにかかるコストを最適化するため
ソフトウェアの不具合は、一般に後工程になるほど修正コストは増える傾向があります。開発の初期段階で専門家による質の高いテストを組み込み、欠陥を早期に発見することは、将来発生しうるコストを未然に防ぐことにつながります。
また、コスト構造の観点からも外注には利点があります。テスト専門の人材を自社で雇用する場合、その人件費は固定費として継続的に発生します。一方、外注であれば、プロジェクトの需要に応じてリソースを投入できるため、コストを「変動費」として扱うことが可能になり、経営資源を効率的に配分できます。
採用や育成にかかる時間と費用を投じることなく、専門スキルを備えた即戦力を迅速にプロジェクトへ迎え入れられる点も、見逃せない魅力でしょう。
ソフトウェアテストの外注で得られる3つのメリット
ソフトウェアテストの外注は、単にリソース不足を補うという守りの一手にとどまりません。品質向上や開発効率化といった、より積極的な価値創出へとつながります。ここでは、外注によって得られる3つの大きな恩恵をご紹介します。
1. 専門家の豊富な知識と経験を活用できる
テスト専門会社は、多様なテスト技法やツールに関する深い知見を組織的に蓄積しています。彼らの専門性を活用することで、自社の開発チームだけでは難しい多角的かつ網羅的な品質検証が実現します。
例えば、金融や自動車、医療といった特定の業界知識(ドメイン知識)を持つ専門家の支援を得られれば、その分野特有の複雑な要件を満たした精度の高いテストが期待できます。
さらに、開発プロセスに直接関与していない第三者の客観的な視点も得られます。開発者自身では気づきにくい仕様の矛盾や、無意識の思い込みに起因する潜在的な欠陥をあぶり出すことで、製品の品質をもう一段階上のレベルへと引き上げることができるのです。
2. 品質保証の体制が整う
ISO/IEC/IEEE 29119などの標準に準拠したプロセスを整備している外注先を選べば、個人のスキルや経験に依存しない、安定した品質保証体制を築くことができます。テストの進め方が体系化されているため、常に一定水準の品質が見込めるからです。
加えて、専門会社が持つテスト自動化のノウハウにより、開発効率を飛躍的に高められるケースもあります。手作業では膨大な時間を要する回帰テストなどを自動化することで、テストの網羅性を維持しつつ、開発サイクルの高速化を後押しします。
3. 開発チームの負担が軽減できる
テスト業務を信頼できる外部パートナーに委ねることで、開発エンジニアを煩雑なテスト作業から解放し、新機能の開発やパフォーマンス改善といった本来のコア業務へ集中させることができます。これにより、製品そのものの付加価値向上と開発スピードの加速が両立します。
ソフトウェアテスト外注の注意点
多くのメリットがある一方で、ソフトウェアテストの外注にはいくつかの留意すべき点も存在します。これらを事前に理解し、対策を講じましょう。
注意点①自社にノウハウが蓄積されない
まず、外注に依存しすぎると、テストに関するノウハウが自社に蓄積されず、将来的にテスト体制を内製化しようとする際の障壁になりかねません。外注先に任せきりにするのではなく、定期的なレポート共有や技術交流の場を設け、知識を組織内に還元する仕組みを意識することが求められます。
さらに、将来の内製化も見据え、積極的にノウハウの伝達や技術支援を提供してくれる外注企業をパートナーとして選ぶことが重要です。
注意点②コミュニケーション不足によるトラブル
次に、発注側とテスト会社とのコミュニケーション不足は、深刻な問題を引き起こす火種となり得ます。仕様の誤解や認識の齟齬が生じれば、期待と異なるテストが実施されたり、無用な手戻りが発生したりする原因となります。仕様変更の伝達ルールや課題発生時の連絡体制など、密な連携を可能にするコミュニケーションの基盤を事前に確立しておきましょう。
注意点③作業範囲とコストの見積もりは入念に
最後に、契約内容やコスト構造が不透明なまま依頼を進めることは厳に慎むべきです。作業範囲や成果物の定義が曖昧な場合、予期せぬ追加費用を請求されたり、期待した品質の報告書が得られなかったりするリスクが伴います。契約を交わす前に、サービス内容、責任範囲、報告形式などを明確に定義しておく必要があります。
テストを外注する会社を選ぶときの4つの視点
会社選定において重視すべき4つのポイントを解説します。
1. 技術と専門性はあるか
最初に、自社の開発手法とテスト会社の得意領域が合致しているかを見極めましょう。伝統的なウォーターフォール開発と、反復的なアジャイル開発では、テストに求められる考え方や進め方が大きく異なります。自社の開発プロセスに深い理解と実績を持つ会社を選ぶことが肝要です。
また、テスト対象となる製品分野の知識も不可欠です。Webサービス、モバイルアプリ、あるいは組み込み機器など、対象領域に関する深い知見や過去の実績を持っているかを確認してください。
とりわけ、テスト自動化やセキュリティ、パフォーマンス(負荷)といった専門領域を依頼する際は、その会社が保有する技術スタックや対応力が自社の要件を満たしているかを慎重に吟味すべきです。
2. 人材と体制は整っているか
テストの品質は、最終的に実行する「人」のスキルに左右されます。ソフトウェアテスト技術者資格「JSTQB」の保有者数といった、客観的な指標で技術レベルを確認するのも一つの手です。
プロジェクトを円滑に進めるための体制も同様に重要です。定例会の実施や日々の報告フローが確立されており、プロジェクトの進捗や課題が遅滞なく共有される仕組みがあるかを確認しましょう。さらに、プロジェクトの状況に応じてテスト人員を柔軟に増減できる体制が整っていれば、急な仕様変更や予期せぬトラブルにも機動的に対応しやすくなります。
3. 実績はあるか
過去の実績は、その会社の能力を判断する上で最も分かりやすい指標と言えるでしょう。自社の業界やプロジェクトの規模と類似した案件での成功事例があれば、選定における有力な判断材料となります。
ISO 9001(品質マネジメント)やISO 27001(情報セキュリティ)といった国際認証の取得状況は、その会社の管理体制の信頼性を客観的に示します。公式サイトの導入事例だけでなく、可能であれば過去の顧客からの評価や継続率なども参考に、長期的な信頼関係を築けるパートナーかを見極めましょう。
4. サービス範囲とコスト透明性は確保されているか
テスト計画の策定から設計、実行、そして結果報告まで、一連のプロセスを一貫して任せられる会社は、コミュニケーションの窓口が一本化されるため、連携のロスを減らすことにつながります。
コストの透明性も、良好な関係を築く上で欠かせない要素です。契約前に確認すべき項目として、以下が挙げられます。
- 見積もりの内訳が詳細かつ明確である
- 追加コストが発生する条件が具体的に示される
これらに加え、契約終了時に納品される成果物のサンプルを事前に確認し、品質の粒度を把握しておくことが後のトラブルを防ぎます。
ソフトウェアテスト外注の具体事例
STELAQが携わった具体的な2つの事例を通して、テスト外注がどのようにプロジェクトの成功に貢献したかを紹介します。
事例①システムテストの属人化を解決し自走体制を整える
総合人材サービスを展開するパーソルホールディングスでは、グループ共通で利用するシステムの品質管理において、テスト業務が特定の担当者の経験に依存する「属人化」の状態にありました。
その結果、品質にばらつきが生じ、リリース後に不具合が見つかることも少なくなかったといいます。
そこで同社は、テスト業務の外注を決定。STELAQはテストの実行に加え、テスト計画の立案から仕様への落とし込み、結果のフィードバックまでを一貫してサポートしました。
テスト業務の外部委託により、同社は「今何をすべきか」という判断基準が明確になり、根拠を持って品質を説明できる体制を構築。さらに、STELAQが持つノウハウやナレッジが積極的に共有されたことで、プロジェクト終了後も社員が自ら品質管理を推進できる「自走できる体制」の実現に至りました。

事例②追加機能の多い証券取引アプリの第三者検証と多端末テストの実施
ある外資系証券会社では、スマートフォンの証券取引アプリにおいて、新機能リリースのたびに不具合が多く発生し、手戻りの増加が課題でした。以前に依頼していたベンダーの品質やスピードにも不安を抱えていたことから、金融業界に知見と実績を持つSTELAQに、テスト設計から実行までの支援を依頼されました。
STELAQはまず、設計書からテスト仕様書を作成。その仕様書に基づき、社内ラボで機能テスト、多端末テスト、アドホックテスト(探索的テスト)を実施しました。テスト結果は不具合の傾向を分析したレポートとして提示されました。
また、STELAQは第三者の視点を活かし、幅広い年代のユーザーを考慮したテストを実施。お客様がストレスなく操作できる画面設計に貢献しました。金融知識を持つエンジニアが、品質を担保しつつスピーディーなテスト支援を行うことで、UI/UX改善の示唆・助言を反映したアプリ設計の実現をサポートしました。

まとめ
ソフトウェアテストは品質保証に不可欠ですが、人材不足や開発スピードの加速化で充分に行えていないケースは少なくありません。
外注を活用すれば専門知識を取り入れ、リソース不足を解消しつつコスト最適化も可能です。依頼を検討する際はテスト範囲やコストを明確にし、実績豊富で信頼できるパートナーを選びましょう。
STELAQが貴社のソフトウェアテストを支援します
STELAQでは、自動車、金融、医療、IoTなど多様な産業での豊富な第三者検証実績を基盤に、貴社のテスト自動化による継続的な品質向上を成功へと導きます。テスト戦略の立案といった上流工程から、自動化ツールの選定・環境構築、さらに社内で自走できる体制を目指すエンジニア教育まで、ソフトウェアテストに関わる課題解決を広くサポートします。
- 多様な産業・ドメインでの豊富な第三者検証実績
- 戦略の立案からテスト環境の構築、内製化まで一気通貫の支援
- 属人化からの脱却を目指す、個社に合わせた柔軟なプラン
テスト工数の増大、品質の安定化、開発スピードの向上に課題をお持ちでしたら、ぜひ一度STELAQにご相談ください。貴社の状況に合わせた最適なプランをご提案し、プロジェクト成功を全力でサポートいたします。